成長著しいインド、越境ECでの参入方法やリスクを解説
インドは世界最多の人口を抱える国であり、2024年の国内総生産(GDP)では日本に次ぐ世界第5位の規模を誇る新興国です。急速な経済成長を背景に、人びとの消費能力も向上していることから、インド向けの越境EC(Cross-border E-commerce)に大きな注目が集まっています。
当記事ではインド向け越境ECの市場規模や成長率のほか、参入方法やリスク、参入に必要なコストなどについて解説します。
1. インドのEC市場の規模は?
インド政府によるデジタル・インディア政策やキャッシュレス社会の推進などを背景に、インドのEC市場は世界で急成長中の市場の1つとなっています。デロイト インディアによれば、インドの2022年におけるEC市場規模は700億ドル(約10兆4864億円)でしたが、2030年には3250億ドル(約48兆5000億円)にまで成長すると予測されています。
若年層の人口が多いこと、中間所得層が増加していること、さらにはデリーやムンバイのような大規模都市ではなく、小規模・中規模都市が成長していることがインドのEC市場の成長を牽引すると見られています。
2. インドのEC市場への参入方法は?
インドのEC市場に参入するうえで、最も容易でリスクが小さい方法はインドの主要なマーケットプレイスを通じて商品を販売する方法。インド向け越境ECで利用される主なマーケットプレイスには、以下のようなものがあります。
アマゾン インディア(Amazon India)
日本でも広く利用されているアマゾン(Amazon)は、インド市場においても多くのユーザーを抱えています。アマゾン インディア(Amazon India)は現地で信頼を獲得しており、幅広いカテゴリの商品を取り扱っていますが、販売手数料が比較的高い点が特徴です。
また、アマゾン インディアはFBA(Fulfilled by Amazon)サービスによって迅速な配送が可能であり、物流を効率化できるのもメリットの1つ。高品質な製品を販売する日本企業には大きなチャンスがあると言えます。
アマゾン インディアに出店するためには、Amazon Global Sellingを利用するのが最も容易です。アマゾン インディアでの販売にかかる手数料の仕組みはほぼアマゾン ジャパンと同等ですが、手数料のレートは異なる場合があるため、アマゾン インディアの公式サイトで確認してください。
フリップカート(Flipkart)
フリップカート(Flipkart)はインド発のマーケットプレイスで、特にファッションや家電製品が強いとされています。インド国内で約4割のシェアを獲得している非常に人気のあるショッピングサイトであり、現在は米ウォルマート傘下となっています。
インド市場に特化したプロモーションやフェスティバルセールを行うなど、インド文化に対応したマーケティング戦略を展開しているのが特徴です。しかしながら、日本企業がフリップカートに直接出店するのは困難なため、現地のパートナー企業と提携し、商品を納品する形で事業を展開する方法が一般的です。
Snapdeal(スナップディール)
Snapdeal(スナップディール)は中小規模のブランドや低価格帯の商品を扱うマーケットプレイスです。、幅広いカテゴリの商品を取り扱っており、特に価格に敏感なインドの消費者をターゲットにしていると言われています。日本からの出店は可能ですが、インド国内の銀行口座を開設する必要があるため、現地のパートナー企業と提携した方が展開がスムーズです。
tata CLiQ(タタクリック)
tata CLiQ(タタクリック)は、インドの大手企業タタグループが運営するeコマースプラットフォームです。ファッション、フットウェア、アクセサリー、エレクトロニクス、ラグジュアリー商品など、幅広い商品を取り扱っており、グローバルなハイブランドも出店しています。日本企業も出店可能ですが、やはりインド国内の銀行口座が必要になります。
3. インドのEC市場への参入におけるリスクは
規制の複雑さ
インドではECにおける外資規制が存在し、B2Cの分野では外国企業による直接投資が制限されているため、消費者向けのECはマーケットプレイスを利用するか、インド国外の自社サイトから販売するかのどちらかとなります。また、インドは関税も比較的頻繁に見直される国の1つです。
物流のトラブル
ムンバイやデリーのような大都市は物流網が整備されていますが、小規模な都市では遅配や紛失は珍しくありません。日本から発送する場合は大手国際物流企業に依頼すべきであり、インド国内からの発送ならばDelhivery、Ecom Expressなど信頼性の高い物流パートナーに依頼することが重要となります。
文化的多様性
14億の人口を抱えるインドは多様な文化や宗教が共存しており、文化・宗教に対する配慮が必須です。また、ヒンディー語や英語、タミル語、テルグ語など、言語の数も非常に多く、地域によって消費者の嗜好も大きく異なるため、単一のマーケティング戦略ではカバーしきれないと言えます。