中国への越境ECはチャレンジする価値あり!参入方法やリスクを解説
中国には日本製品を信頼する消費者が数多く存在し、越境ECを通じて大きな成功を収めている日本企業は少なくありません。商習慣の違いや変化の速さなど、日本企業にとって中国市場にはたくさんのハードルが存在するのは事実ですが、マーケットの規模や成長性を考慮するとチャレンジする価値はあると言えます。
当記事では、中国向けの越境EC市場の現状を日本との比較を交えながら紹介し、中国向け越境ECに参入するための方法をリスクや課題などと併せて解説します。
1. 中国向け越境ECの規模と成長率
世界最大のEC市場を抱える中国では「越境EC」の市場規模も拡大し続けており、日本の対中越境ECも成長を続けています。
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によれば、日本の対中越境ECの金額は2兆4301億円と推計されており、今後もさらに伸びていくと予想されています。
日本の中国向け越境EC市場が成長している理由
中国のEC市場は中間所得層の増加と購買力の拡大を背景に成長してきましたが、これは日本の対中越境ECが成長している理由にも当てはまります。さらに、中国では健康志向の高まりや、品質重視といった消費者の嗜好の変化もあり、これらの要素が越境ECの成長を後押ししています。
一方、中国の一部の消費者は「中国産」を支持するようになっており、日本製品を盲目的に支持するような消費者は減っているのも事実。価格や品質、ブランド力、クチコミなどを総合的に判断して購入する消費者が増えていることから、第三者の評価やクチコミを上手に活用したマーケティングが効果的となっています。
2. 中国向け越境ECの参入方法
日本では誰でも簡単に通販サイトを立ち上げることが可能ですが、中国では事情が大きく異なります。中国ではウェブサイトを立ち上げるためには「ICPライセンス」という許可証が必要となり、通販サイトのように決済が伴うサイトの場合は、取得が非常に難しい「経営性ICPライセンス」が必須となります。
外資企業が「経営性ICPライセンス」を取得するのはほぼ不可能と言われており、日本企業が中国市場に越境ECで参入するうえでの選択肢は大きく分けて「A.中国のECモールへの出店」、「B.中国国外にサーバを設置して通販サイトを立ち上げ」のいずれかに絞られます。
A. 中国の越境ECモールへの出店
参入のハードルが低い方法の1つとして挙げられるのが、「天猫国際(Tmall Global)」や「京東全球購(JD Worldwide)」といった中国の主要な越境ECプラットフォームに出店する方法です。
メリット
すでに多くのユーザーに支持されるプラットフォームであるため集客力は抜群。決済から販売・物流に至るまでシステムが整備されているため簡単に販売が開始できること、多くの日本企業が参入しており、事例が豊富であることもメリットです。
デメリット
参入のハードルは低いものの、出店審査は非常に厳格です。また、出店者数が非常に多いため、競争が厳しいのもデメリットと言えるでしょう。商材によっては価格競争に陥りやすいほか、出店手数料や販売手数料も発生するため利益率の低下に直面しやすいのも課題の1つです。
B. 中国国外サーバーでのECサイト構築
もう1つの方法は、自社で中国向けのECサイトを構築して中国人消費者に販売を行う方法です。前述のとおり、中国では通販サイトを立ち上げるのは非常に困難ですが、これはあくまでも「中国国内にサーバーを設置する場合」の話です。
香港や日本など中国国外にサーバーを設置する場合はICPライセンスは不要であり、決済機能を持たせた通販サイトでも同様にICPライセンスは必要ありません。中国語で通販サイトを立ち上げ、Alipay(アリペイ)などの中国の決済サービスを導入することで、中国向けに越境ECを展開することが可能となります。
一方、この方法には「中国の検索エンジンでの順位が低下する可能性が大きい」といったデメリットもありますが、「小紅書(レッドブック)」をはじめとする人気のSNSを集客ツールとして積極的に活用することで、デメリットを補うことが可能です。また、この方法は「中国人消費者の個人輸入に該当する取引」となり、行郵税という税金が課せられるため、価格競争力が低下してしまうこともデメリットの1つです。
メリット
自社で中国向けのECサイトを構築することのメリットはモール出店に比べて利益率が大きくなるほか、顧客データやノウハウを獲得できることが挙げられます。
デメリット
集客やマーケティングを自社で行う必要があり、場合によっては負担が大きくなる可能性があります。また、中国語やサイト構築、EC運営に関する専門知識が求められます。
3. 中国向け越境ECへの参入する際に発生しがちなリスク
中国向け越境ECには大きな可能性があることは誰もが認めるところですが、参入を検討するにあたってはリスクも考慮する必要があります。中国は日本とはまったく異なる市場であるため、中国向けの越境ECに参入する際に発生しがちなリスクについて解説します。
法律面のリスク
中国は法律が頻繁に変更される国であるうえ、日本と違って発表後に「即変更」となるケースも少なくありません。また、日中関係が悪化した際などは一部の物品が輸入禁止となる可能性があるのもリスクの1つと言えます。
知的財産権の侵害リスク
中国は今でも大量の海賊品が流通しているほか、他国で流行した事物の商標を勝手に取得されるといったトラブルが多発しています。知的財産権の侵害リスクと対処方法は常に念頭に置いておくべきです。
市場競争のリスク
中国向けの越境EC市場には大きなチャンスがある分、競争も激しくなっています。商品そのものの差別化はもちろんのこと、マーケティングの差別化も重要となっています。また、中国は日本とは比べものにならないほど変化のスピードが早い市場であり、決断をためらっているうちに変化に取り残されてしまうリスクも存在します。
4. 中国越境ECに必要となるコストは?
越境ECに参入する場合はリスクと併せて、コストも考慮する必要があります。越境ECモールへの出店を選択するならば、
- 5万元(約100万円)以上の保証金
- 年間3万元(約62万円)以上のシステム利用料
- 売上の0.5%~5%にあたる販売手数料
などのコストのほか、さらに物流費用やマーケティング費用が必要となります。
一方、中国国外サーバーでのECサイト構築する場合は、
- 年間10〜30万円ほどのサーバー費用(香港)
- 中国語でのサイト構築・保守・運営
などのコストが必要となります。中国向け越境ECには一定のコストが必要となるうえ、リスクも存在します。参入を検討する際には、これらを十分に理解し、適切な戦略を立てることが重要となります。