取り組む価値あり!中国の検索エンジンを使った「コンテンツマーケティング」

「有益な情報の提供」を通じて、顧客と信頼関係を構築するマーケティング手法は「コンテンツマーケティング」と呼ばれます。

検索エンジン経由で価値ある情報を発信し、ウェブサイトにユーザーを誘導するコンテンツマーケティングは日本で広く行われていますが、この手法は中国でも活用できるのでしょうか。

結論から言えば、中国でも検索エンジンを通じたコンテンツマーケティングは「限定的ながら実行可能」です。

また、中国向けのコンテンツマーケティングは日本にいながらにしても可能なケースがあるため、取り組む価値はあると言えます。

本記事では、中国の検索エンジンをめぐる環境を解説しつつ、検索エンジン経由のコンテンツマーケティングについて詳しく解説していきます。

1. 中国で利用されている検索エンジンの種類とそれぞれのシェア

日本の検索エンジン市場ではPC、モバイルのいずれにおいてもGoogleが圧倒的なシェアを獲得しています(Yahoo!Japanの検索エンジンはGoogleが使われているため)。Google一強の日本でコンテンツマーケティングを展開する場合、乱暴な言い方をすれば「Googleが定める仕様に最適化すれば済む」のですが、中国は事情が大きく異なります。

Bingのトップページ

出典:Bing

中国の検索エンジン市場は、PCではマイクロソフトのBingが4割ほどのシェアでトップの座を獲得しており、続いて百度(Baidu)、360検索(haosou)、搜狗(Sogou)と続きます。

Baidu

出典:百度

モバイルでは百度(Baidu)が7割前後のシェアを獲得してトップとなっており、残り3割をBing、搜狗(Sogou)、神马(Shenma)、360検索(haosou)という順でシェアを奪い合う構図となっています。

中国の場合はPCとモバイルでトップシェアの検索エンジンが異なっているうえ、検索エンジンの種類も多いため、SEO対策は日本以上に複雑です。検索エンジンはそれぞれが独自のアルゴリズムでランクづけを行っており、すべての検索エンジンに最適化するのは困難だからです。

したがって、中国でコンテンツマーケティングを行う場合は、有益な情報を届けたいユーザー(=自社にとってのターゲットユーザー)は「PCとモバイルのどちらで検索エンジンを利用しているのか」という観点から、最適化対象の検索エンジンを選ぶというのが現実的な選択肢となります。

2. ICPライセンスについて

BaiduのICPライセンス

出典:百度

日本では誰でも簡単にウェブサイトを立ち上げ、運営することができますが、中国国内でウェブサイトを開設し、運営するにはICP(Internet Content Provider)と呼ばれるライセンスの取得が必須となっています。

上記の画像は中国の検索エンジン「百度」のICPライセンスを示したものです。赤枠の部分に書かれている「京ICP証030173号」という文字列がICPライセンスであり、中国国内にホスティングされている場合はすべてサイト下部に固有のICPライセンスが示されています。

ICPライセンスのないサイト(=中国国外のサーバに存在するサイト)は、中国国内からのアクセスが制限される場合があるほか、中国系の検索エンジンではランキングで不利となると言われています。

中国でICPライセンスを取得するには様々な条件があります。特に外資企業にとっては高いハードルを超える必要があり、ウェブサイトを通じてビジネスを行う場合はさらに条件が厳しくなります。

3. ICPライセンスなしで中国向けコンテンツマーケティングを展開する方法は?

中国系の検索エンジンではICPライセンスがないサイトはランキングで不利になる可能性が高いものの、Bingは中国国内のICPライセンス取得を上位表示の必須条件としておらず、中国国外でホスティングされているサイトでも上位表示が可能と言われています。

つまり、Bing経由であれば、日本にサーバを置いたサイトでも中国向けのコンテンツマーケティングが可能ということです。

Bingは中国のPC向け検索エンジン市場で最大のシェアを獲得しているため、主に企業向けの商品やサービスを取り扱っているのであれば、Bing経由で中国向けコンテンツマーケティングに取り組む価値があると言えるでしょう。

一方、モバイルの検索エンジンで最大のシェアを獲得している百度ではICP未取得のサイトは上位表示が困難と言われています。コンシューマー向けの商品がメインかつ、ICP取得が困難の場合は、検索エンジンではなく、「SNS」をメインにコンテンツマーケティングを展開するのがベターです。

4. サーバーのホスティング場所

中国ではサーバーのホスティング場所がウェブサイトの表示速度やSEOに大きな影響をもたらします。

中国国内にサーバーを置くことができれば、サイトの表示速度においてプラスの影響があり、中国系の検索エンジンでも上位表示の可能性が高まります。

しかし、上述したように中国国内にサーバーを置くためにはICPライセンスが必要であり、ICPライセンスの取得は決して簡単なことではありません。

そこで、検討したいのが「香港サーバー」でのホスティングです。SEO上ではICPライセンスを保有するサイトに比べて不利になるものの、香港はICPライセンスがなくてもホスティングが可能であり、中国系検索エンジンでも問題なく表示されるうえ、上位表示も不可能ではありません。

したがって、中国市場への足がかりとしてテストマーケティングを行いたい場合などは、まず香港サーバでサイトを運用するといった手法が取られます。

5. 中国向けコンテンツマーケティングの注意点

中国でも日本同様、検索エンジンを使ったコンテンツマーケティングが実行可能です。しかし、実際に中国向けのコンテンツマーケティングを行うにあたっては注意点もあります。

中国政府による規制と検閲(グレートファイアウォール)

日本と中国ではインターネットに対する規制に大きな違いがあり、中国はグレートファイアウォールと呼ばれるシステムを用いて情報の検閲を行っています。主に政治的な話題が検閲対象となり、こうした情報はアクセスがブロックされます。

また、中国では「敏感な話題」について触れることも非常に危険です。検閲によって検索エンジンでの順位やインデックス自体が制限される可能性があるほか、場合によっては処罰の対象となるリスクがあるためです。

政治・宗教・ポルノ・ギャンブルなどに関するコンテンツは規制の対象となっており、中国の法律や規制に従ってコンテンツを適切に管理することが重要となります。

中国語簡体字(zh-hans)によるコンテンツ提供

中国の検索エンジンは中国語簡体字で最適化されたサイトを優先して表示します。日本語や英語のページは検索エンジンでほぼ表示されないため、文字コード「zh-CN(中国本土向けの簡体字中国語)」や「zh-hans(中国語簡体字、地域非特化)」に最適化したうえで、「普通話」の表現に基づいて情報を発信することが重要です。

もちろん特定の地域だけに情報を発信したいということであれば、普通話の表現ではなく、現地で使われている表現を使用しても構いません。